こんにちは、「ラッパ吹きの防音研究所」所長の「J」です。
防音室を探していると、必ず目にするのが「Dr-30」「Dr-40」という表記。
でも、この数字が何を意味するのか、自分の使い方にどの等級が合うのか、分からないまま選んで後悔している方が本当に多いんですよね。
私自身、ラッパ(トランペット)を長年演奏してきた経験から、防音室の性能選びは「数字だけ見ていると失敗する」と痛感しています。
Dr値は防音室の性能を示す大切な指標ですが、同じDr-40でも楽器の種類や住んでいる建物の構造によって、体感はまったく変わってきます。
この記事では、Dr値・遮音等級の意味をゼロから丁寧に解説し、あなたの用途に合った等級の選び方まで、具体的な数字と一緒に整理していきます。
- Dr値・遮音等級の定義と、D値との違いが分かる
- 等級ごとの「実際の聞こえ方」と生活実感が分かる
- 楽器別に必要なDr値の目安を計算する方法が分かる
- ヤマハ・カワイなど主要メーカーの性能・費用を比較できる
防音室のDr値とは何かを基礎から解説
防音室を選ぶうえで、最初に押さえておきたいのがDr値の基本的な意味です。
カタログに並ぶ数字の意味を正しく理解することで、メーカーの説明に振り回されず、自分の目的にぴったりの防音室を選べるようになります。
ここでは、Dr値の定義から、混同しやすい関連指標の違いまで、順番に整理していきましょう。
Dr値の定義と物理的な意味
Dr値とは、「室間音圧レベル差等級」の略称で、日本産業規格(JIS)によって定められた遮音性能の評価指標です。
簡単に言うと、音を出している部屋(音源室)と、音が漏れてくる隣の部屋(受音室)の間で、音がどれだけ小さくなったかを数値で示したものです。
たとえば「Dr-40」であれば、音源室で発生した音が、隣の部屋に届くまでに40デシベル(dB)減衰することを意味します。
デシベルは対数のスケールで表されるため、10dB下がるとエネルギーとしては10分の1、20dB下がると100分の1になります。
つまり、Dr値が大きいほど、より強力に音を遮断できるということです。
重要なのは、Dr値が「特定の一つの音」を遮断する数値ではないという点です。
人間の耳は周波数(音の高低)によって感じ方が異なるため、Dr値は125Hzから4000Hzにわたる複数の周波数帯で測定した遮音性能を総合的に評価して算出されます。
この「総合評価」という点が、Dr値を実生活に即した信頼できる指標にしている理由です。
【Dr値のポイント】
Dr値は単一の周波数ではなく、複数の周波数帯での総合的な遮音性能を示す指標。
数値が大きいほど遮音性能が高く、10dBの差はエネルギーとして10倍の違いになります。
D値との違いと表記が2種類ある理由
防音室の資料を調べていると、「Dr-40」と「D-40」という2種類の表記が混在していることに気づくと思います。
どちらが正しいのか混乱しますよね。
結論から言うと、Dr値とD値は実質的に同じ意味を持つ指標で、表記が違うのは規格の歴史的な経緯によるものです。
もともと「D値」は、1992年に日本産業規格(JIS A 1419)で定められた「室間音圧レベル差」の評価指標でした。
その後、2000年にJIS規格が国際基準との整合性を図る目的で改定され、この際に表記が「D値」から「Dr値」へと変更されました。
一方で、日本建築学会が独自に制定した「建築物の遮音性能基準」では、改定後も「D-50」のような「D値」表記を継続して使用しています。
そのため、JIS規格に基づく建材や測定結果には「Dr-40」が用いられ、建築学会の設計指針には「D-40」が用いられるという状況になっています。
実務上は「Dr値=D値」と理解して問題ありません。
カタログや資料を見るときは、どちらの表記であっても同じ基準で比較できます。
【補足】表記の見分け方
・「Dr-40」→ JIS規格(2000年改定後)に準拠した表記
・「D-40」→ 日本建築学会の基準または改定前JISに基づく表記
どちらも遮音性能の意味は同じです。
TLD値・Rr値との混同に注意
防音の世界には、Dr値以外にも「TLD値」「Rr値」といった似た指標が存在します。
これらをDr値と混同すると、カタログスペックが実際の性能より高く見えてしまうことがあるため、しっかり区別しておくことが大切です。
まず「TLD値(透過損失等級)」と「Rr値」は、実験室の理想的な条件のもとで部材(壁や扉)単体を測定した値です。
実験室では音が壁以外の経路で回り込む「側路伝搬」がゼロに近い状態で測定されるため、部材本来の性能が最大限に発揮されます。
一方、実際の住宅に防音室を設置した場合、床・天井・柱・換気ダクトなど様々な経路から音が回り込む「側路伝搬」が避けられません。
この影響により、実際の現場で測定されるDr値は、部材のTLD値と比較して一般に1〜2ランク(5〜10dB程度)低下するのが音響工学上の常識です。
つまり、「TLD-45の防音壁を使ったから、防音室はDr-45になる」という計算は成り立ちません。
防音室を選ぶ際は、実際の設置環境での測定値であるDr値を基準にすることが重要です。
【注意】カタログの数値には要注意
TLD値やRr値は実験室での部材単体の数値です。
実際の設置環境でのDr値は、側路伝搬の影響で5〜10dB程度低くなることを見込んで計画しましょう。
遮音等級ごとの性能と生活実感の目安
Dr値が何を意味するか分かったところで、次に気になるのは「実際にどのくらい音が聞こえるのか」という生活実感との対応関係です。
数字だけでは想像しにくい防音性能を、具体的な聞こえ方として理解することで、必要な等級が自然と見えてきます。
ここでは等級ごとの聞こえ方の違いと、楽器別の必要Dr値の考え方をお伝えします。
Dr-30からDr-50の聞こえ方の違い
防音室の等級は一般的にDr-30、Dr-35、Dr-40という5刻みで展開されることが多いですが、この「5」の差が実生活ではとても大きな違いになります。
日本建築学会のデータや国内メーカーの測定結果をもとに、主要な等級ごとの生活実感をまとめると以下のようになります。
| 等級 | ピアノ・管楽器(約90〜110dB)の聞こえ方 | テレビ・会話(約50〜70dB)の聞こえ方 | 生活実感 |
|---|---|---|---|
| Dr-50 | 注意して耳を澄ませば気配を感じる程度 | ほぼ完全に聞こえない | 苦情リスクは非常に低く、プロ演奏にも対応できるレベル |
| Dr-45 | 演奏していることはわかるが旋律は判別困難 | 静かな時間帯にわずかに気づく程度 | 隣戸の在宅状況が音でわかることがある |
| Dr-40 | どの曲か旋律がはっきり聞き取れる | 深夜には耳障りに感じる | 騒音への配慮が必要なレベル |
| Dr-35 | 大きな演奏音がほぼそのまま届く | 会話内容がおおよそ分かる | プライバシー維持が難しい |
| Dr-30 | うるさいと感じられる | 話の内容がほぼ分かってしまう | 日常的な苦情リスクが高い |
この表を見ると、Dr-40とDr-45では「旋律が分かるかどうか」という大きな差があることが分かります。
トランペットのような管楽器を演奏するなら、Dr-40以下では日中でも近隣に演奏内容が筒抜けになる可能性があります。
5dBの差は数字上は小さく見えますが、音響エネルギーとしては約3分の1の差です。
「一つ上の等級にしておけばよかった」という後悔は、防音室購入後の失敗談でよく耳にします。
◆「J」のワンポイントアドバイス
楽器別に必要なDr値の目安一覧
必要なDr値は、演奏する楽器の音量(dB)と、音が漏れた先の目標音量から逆算することで求められます。
計算の基本式は非常にシンプルです。
必要なDr値 = 楽器の最大音量(dB) ― 目標とする音量(dB)
日中の閑静な住宅街の暗騒音は約40〜45dBとされています。
この水準にまで音を抑えることを目標として、代表的な楽器ごとの必要Dr値の目安を整理すると次のようになります。
| 楽器・音源 | 最大音量の目安 | 目標40dBにするための必要Dr値 | 推奨等級(余裕を含む) |
|---|---|---|---|
| 日常会話 | 50〜70dB | Dr-10〜30 | Dr-30以上 |
| バイオリン | 約85dB | Dr-45 | Dr-45以上 |
| クラリネット・フルート | 70〜95dB | Dr-35〜55 | Dr-40以上 |
| アップライトピアノ | 70〜95dB | Dr-35〜55 | Dr-40以上 |
| グランドピアノ | 90〜110dB | Dr-50〜70 | Dr-50以上 |
| サックス・トランペット | 100〜120dB | Dr-60〜80 | Dr-50以上+住宅の既存性能 |
| 生ドラム | 80〜120dB | Dr-40〜80 | Dr-50以上+防振対策必須 |
この表はあくまで一般的な目安です。
実際には演奏時間帯・隣戸との距離・住宅の構造によって大きく異なります。
最終的な判断は専門家に相談することをおすすめします。
低音域が遮音しにくい理由と設計的対策
防音室を選ぶ際にもう一つ知っておきたいのが、低音は高音に比べてはるかに遮音が難しいという物理的な事実です。
生ドラムのバスドラムや、グランドピアノの低音弦、トランペットのペダルトーンが防音室の外に漏れやすいのは、この物理法則によるものです。
音の遮音性能は「質量則」と呼ばれる物理原則に支配されており、音の周波数が2倍(1オクターブ高く)なると、遮音効果は約6dB向上します。
逆に言えば、周波数が半分(1オクターブ低く)になるごとに、同じ壁でも遮音効果が6dB下がるということです。
500Hzでは十分な遮音ができている壁でも、125Hzの低音になると遮音効果がガクッと下がるのはこのためです。
さらに問題なのが、バスドラムやピアノの低音は床や壁の構造体を振動させる「固体伝搬音」として広がることです。
この固体伝搬音は、空気中を伝わる音とは異なり、防音室の壁を厚くするだけでは対処できません。
設計的な対策としては、以下のアプローチが有効です。
二重壁構造による空気層の確保
2枚の壁の間に空気層を設ける「二重壁構造」は、低音の遮音に最も効果的なアプローチです。
中間の空気層にグラスウールなどの吸音材を充填することで、音のエネルギーを熱に変換して大幅に減衰させることができます。
防振材・浮き床の導入
固体伝搬音を防ぐためには、防音室の床に防振ゴムや浮き床用ダンパーを組み込み、建物の構造体から物理的に切り離す「デカップリング」が必要です。
特にドラムやグランドピアノを使用する場合は、この防振対策を最優先で検討してください。
防音室のDr値の正しい選び方
必要な性能の目安が分かったところで、実際にどう選べばよいかを具体的に解説します。
Dr値は防音室単体の性能だけで考えてはいけません。
既存住宅の性能との合算計算や、ヤマハ・カワイなど主要メーカーの製品特性を理解した上で、用途と予算のバランスを取ることが選び方の核心です。
必要なDr値を計算する方法
必要なDr値を求めるには、まず「演奏する楽器の最大音量」と「防音室の外で許容できる音量」の差を計算します。
例:クラリネット(90dB)を、昼間の閑静な住宅街(40dB)の水準に抑えたい場合
90dB ― 40dB = 50dB → Dr-50相当の性能が必要
ただし、この「Dr-50」を防音室単体だけで実現しようとすると、非常に大型で高価な製品が必要になります。
ここで重要なのが、次のセクションで説明する「住宅の既存性能との合算」という考え方です。
また、騒音規制法や環境基本法では、住宅地における昼間の騒音基準を55dB以下、夜間を45dB以下と定めています(地域区分によって異なります)。
深夜に演奏する可能性がある場合は、夜間基準で計算することを忘れないでください。
正確な規制値については、お住まいの自治体や専門家にご確認ください。
住宅の既存性能を合算する設計手法
防音室の性能設計において、多くの人が見落としがちな重要な考え方があります。
それが「住宅の既存遮音性能と防音室の性能を合算する」という手法です。
トータル遮音性能 ≈ 住宅の既存性能(Dr-House) + 新設防音室の性能(Dr-Room)
一般的な分譲マンションや住宅の窓(二重サッシ等)や外壁は、標準でDr-25程度の遮音性能を持っています。
この既存の住宅性能を活かすことで、導入する防音室の等級を1〜2ランク下げることができます。
例:マンション(既存Dr-25)にDr-30の防音室を導入した場合
25 + 30 = Dr-55相当のトータル性能
クラリネットの90dBは、敷地境界線上で90 ― 55 = 約35dB(図書館内部以下)まで減衰します。
これは深夜でも近隣トラブルを回避できる十分な性能です。
この考え方を使えば、必ずしも最高等級の防音室を選ぶ必要はなく、コストを抑えながら必要な性能を確保することが可能になります。
ただし、住宅の既存性能は建物の構造・築年数・開口部の状態によって大きく異なります。
正確な合算計算は、防音の専門家に現地調査を依頼することをおすすめします。
【設計のポイント】合算計算で無駄なコストを省く
・住宅の既存性能(一般にDr-20〜30)をまず把握する
・必要な「トータル性能」から住宅の既存性能を引いた値が、選ぶべき防音室の等級の目安
・建物構造によって既存性能は大きく異なるため、専門家への相談が確実
ユニット型と自由設計施工の性能比較
防音室の導入形態は大きく4つに分類されます。
それぞれの性能・費用・メリット・デメリットを正確に把握した上で、ライフスタイルに合った選択をすることが大切です。
| 形態 | 代表例 | 到達可能なDr値 | 費用相場(税込) | 主な特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 本格ユニット型 | ヤマハ セフィーネNS、カワイ ナサール | Dr-30〜Dr-50 | 80万〜350万円 | 移設可能、機密性高い |
| 簡易組立ブース | おてがるーむ、ライトルーム | Dr-20〜Dr-30 | 20万〜30万円 | 軽量・安価、低音遮音は限界あり |
| 自由設計施工 | 防音専門業者による工事 | Dr-30〜Dr-70以上 | 200万〜600万円 | 最高性能、原状回復は困難 |
| DIY防音室 | 自作木枠・石膏ボード組み上げ | Dr-20〜Dr-25程度 | 15万〜30万円 | 最安価、施工精度で大きく変動 |
引っ越しの予定がある場合はユニット型が安心です。
現住居への永住が決まっており最高の性能を求めるなら、自由設計施工が最も確実な選択肢になります。
費用は一般的な目安であり、実際の費用は仕様・建物の状態・施工業者によって大きく異なります。
ヤマハとカワイの主要製品スペック比較
国内の防音室市場で圧倒的なシェアを誇る2大ブランドが、ヤマハの「アビテックス」とカワイの「ナサール」です。
どちらも高品質な製品ですが、設計思想と得意とする用途に明確な違いがあります。
ヤマハ アビテックス(セフィーネNSシリーズ)
ヤマハのアビテックスは、移設のしやすさとリセールバリューの高さが最大の強みです。
パーツ数が少なくシンプルな構造のため、解体・再組み立てが比較的容易で、賃貸住宅に住む方や将来の引っ越しを見込む方に特に向いています。
中古市場での流通数が多く、ブランド認知度が高いため、使用後に適正価格で売却しやすいのも大きなメリットです。
ただし、定型ユニットの最高等級はDr-40となります。
カワイ ナサール
カワイのナサールは、高遮音性能とカスタマイズ対応力の高さが際立っています。
ユニット型でDr-50等級の製品をメーカー純正ラインナップとして展開しており、生ドラムやグランドピアノを使用するプロ志向のユーザーにも対応できます。
梁を回避するオーダー対応や最大10畳までの大型サイズへの対応力も豊富です。
一方で、ネジや固定点数が多い重厚な構造のため、頻繁な移設には向いていません。
どちらが優れているかではなく、ライフスタイルと演奏する楽器に合わせて選ぶのが正解です。
将来的な引っ越しや売却を考えているならアビテックス、高性能・大型・永久設置ならナサールという判断が基本的な目安になります。
簡易防音ブースを選ぶ際の注意点
「ライトルーム」「おてがるーむ」「だんぼっち」などの簡易防音ブースは、価格が20万〜30万円程度と手頃で、組み立ても半日程度で完了するため、手軽に導入できる点が魅力です。
しかし、その性能には明確な限界があることを、購入前にしっかり理解しておく必要があります。
簡易ブースの遮音性能はDr-20〜Dr-30程度が上限です。
この等級でカバーできるのは、テレビの音量を下げる・深夜の軽い電子ピアノ(ヘッドホン推奨)・録音時の外部ノイズを減らすといった用途に限られます。
トランペット・クラリネット・生ドラムのような大音量の楽器には、根本的に性能が足りません。
また、簡易ブースの多くは吸音材を内部に貼り付けた構造のため、内部の音は吸収されますが低音域の遮音はほぼ期待できません。
さらに、内部が吸音過多になりすぎて音の反響がなくなり、演奏しにくいと感じる方も多いです。
簡易ブースは「防音室」というより「防音の補助ツール」として位置づけるのが現実的です。
ピアノや管楽器の本格的な練習環境を目的とするなら、最初からユニット型防音室(Dr-30以上)を選ぶことを強くおすすめします。
【注意】簡易ブースで管楽器・生ドラムは対応不可
簡易防音ブースの遮音性能はDr-30程度が上限。
トランペット・サックス・生ドラムなど大音量楽器には性能が不足します。
用途を明確にしてから製品を選びましょう。
用途に合った防音室を選ぶための最終判断
ここまでDr値の意味・等級ごとの性能・各製品の特性を整理してきました。
最後に、あなたの状況に合った防音室を選ぶための判断基準をまとめます。
「引っ越す可能性があるか」「本格的な演奏環境が必要か」「数値だけで判断しようとしていないか」の3点が最終的な選択の分かれ目です。
引っ越しを想定する場合の選択基準
将来的に引っ越しや転勤の可能性がある方にとって、防音室の「移設しやすさ」は性能と同じくらい重要な選択基準です。
引っ越しを想定する場合は、ヤマハのアビテックスのような定型ユニット型が第一候補になります。
解体・再組み立てが比較的容易で、移設工事費用も自由設計施工の防音室と比べて大幅に抑えられます。
さらに、中古市場での需要が安定しているため、使用後に売却して次の住居での新しい防音室購入費に充てるという計画も立てやすいのが特徴です。
一方、自由設計施工の防音室は原状回復が困難なため、賃貸住宅や将来の転売を考えている物件には原則として向きません。
施工前に必ず、建物の管理規約や原状回復の条件を確認してください。
また、引っ越し先の住居が木造2階以上の場合は、ユニット型防音室の重量(200〜500kg程度)に耐えられる床の耐荷重強度を事前に確認することも忘れずに。
必要に応じて、床補強工事を見込んだ予算計画を立てることをおすすめします。
永住・本格演奏環境を求める場合の選択基準
現住居への永住が決まっており、妥協のない演奏環境を構築したい場合は、選択肢が大きく広がります。
まず、ユニット型でDr-50以上を求める場合はカワイのナサール(高遮音タイプ)が選択肢に入ります。
グランドピアノやドラムセットを使う本格的な演奏環境には、ナサールの大型オーダー対応や高遮音ラインナップが頼りになります。
さらに上の性能(Dr-50超、Dr-70程度)を目指すなら、防音専門業者による自由設計施工(防音リフォーム)が最も確実な選択です。
既存の部屋を丸ごと防音空間に改装することで、既存スペースを最大限に活用しながら最高水準の遮音性能を実現できます。
費用は200万〜600万円程度が一般的な目安ですが、仕様や建物の状態によって変動します。
必ず複数の専門業者から見積もりを取り、実績と提案内容を比較して判断してください。
どの選択肢を採るにしても、固体伝搬音への対策(防振材・浮き床)を忘れないことが永住型防音室の肝です。
壁の遮音性能だけを高めても、床から構造体を伝わる低音は止められません。
Dr値だけで選ばず構造から相談すべき理由
ここまで読んでいただいた方は分かるかと思いますが、Dr値の数字だけを見て防音室を選ぶのには限界があります。
同じDr-40の防音室でも、設置する部屋の形状・建物の構造・床の素材・換気ダクトの有無によって、実際の遮音性能は大きく変わります。
また、低音の扱い、防振設計、隣戸との距離感など、Dr値の数字だけでは見えない要素が最終的な性能を左右します。
防音室の性能を最大限に引き出し、導入後の「思ったより音が漏れる」という後悔を避けるためには、楽器の種類・演奏頻度・住環境を総合的に踏まえた上で構造から設計できる専門家への相談が最も確実な方法です。
特に、ハウスメーカーと提携した防音設計の相談窓口では、建物の構造を把握した上で最適な防音室プランを提案してもらえます。
積水ハウスのような大手ハウスメーカーは防音設計にも実績があり、すまいValue(すまつな)などのサービスを経由して相談することで、建物の構造から一貫した提案を受けられることがあります。
まずは無料相談から始めて、あなたの住環境に合ったDr値と構造の組み合わせを専門家と一緒に見つけることをおすすめします。
◆「J」のワンポイントアドバイス
私がラッパを吹く環境を整える際に最も後悔したのは「カタログのDr値だけを比べて選んだこと」でした。
設置後に気づいたのは、床からの固体伝搬音が思った以上に大きかったということ。
Dr値は壁の性能。床の振動対策は別の話です。
最初から専門家に相談していれば、防振材の選定も込みで提案してもらえたはずです。
防音室のDr値に関するよくある質問(FAQ)

Q1. Dr値とdB(デシベル)は同じ意味ですか?
A. Dr値とdBは別物です。dBは音の大きさそのものを表す単位で、Dr値は「音がどれだけ減衰したか」を複数の周波数帯で総合的に評価した等級指標です。たとえば「Dr-40」は、複数の周波数で測定した結果、平均的に40dBの遮音性能があると判定された等級を意味します。dBの数値が大きいほど音が大きく、Dr値が大きいほど遮音性能が高いという方向性の違いにも注意してください。
Q2. Dr-30とDr-40では実際にどのくらい違いますか?
A. 数字上は10の差ですが、音響エネルギーとしては10倍の差があります。生活実感では、Dr-30だとピアノの演奏が「うるさいと感じる」レベルで漏れてくるのに対し、Dr-40では「旋律は聞こえるが注意しなければ気にならない」程度になります。楽器の種類や演奏時間帯によって必要な等級は変わりますが、管楽器や弦楽器を本格的に練習するならDr-40以上を目安にすることをおすすめしています。
Q3. 賃貸マンションに防音室を設置できますか?
A. ユニット型の防音室(ヤマハのアビテックス・カワイのナサールなど)は、原則として解体・撤去が可能なため、賃貸住宅でも設置できるケースが多いです。ただし、重量が200〜500kg程度あるため、設置前に床の耐荷重を確認することと、管理規約・賃貸契約書に設置禁止の条項がないかを確認することが必須です。自由設計施工(防音リフォーム)は壁や床を改造するため、賃貸への導入は原則として困難です。必ず大家さんや管理会社に相談の上、専門家にアドバイスを求めてください。
Q4. 防音室の中に換気はできますか?
A. ヤマハのアビテックスやカワイのナサールなどの本格ユニット型防音室には、換気システム(防音型換気扇)がオプションまたは標準装備として用意されています。ただし、換気ダクトは音の抜け道になりやすいため、防音性能を維持しながら換気するには専用の防音型ダクトや消音ボックスを正しく設計・設置することが重要です。換気システムの設置については、メーカーまたは施工業者に詳細を確認することをおすすめします。
Q5. 中古の防音室を購入する際の注意点はありますか?
A. 中古防音室は新品に比べてコストを抑えられますが、いくつかの注意点があります。まず、防音パネルやシーリング材の経年劣化により、カタログ上の性能より実際の遮音性能が低下している場合があります。また、解体・再組み立て時に気密性が落ちやすく、隙間から音が漏れるリスクも高まります。購入前に現物の状態(パネルの変形・シール材の劣化・扉の開閉状態)を確認し、専門業者による状態チェックを受けることをおすすめします。
まとめ:Dr値を正しく理解して後悔しない防音室選びを
この記事では、防音室のDr値・遮音等級について、定義から選び方まで体系的に解説してきました。
最後に要点を整理しておきます。
- Dr値は複数の周波数帯での総合的な遮音性能を示す等級で、数値が大きいほど遮音性能が高い
- D値とDr値は実質的に同じ意味。TLD値・Rr値は実験室での部材単体の数値で、現場のDr値より5〜10dB高く出やすい
- 必要なDr値は「楽器の最大音量 ― 目標音量」で計算し、住宅の既存性能との合算で最適な等級を選ぶ
- 引っ越し可能性がある場合はヤマハのアビテックス、高性能・永住型はカワイのナサールまたは自由設計施工が基本的な判断基準
- 低音・固体伝搬音への防振対策はDr値とは別に必ず検討が必要
- Dr値の数字だけでなく、構造から設計できる専門家への相談が失敗を防ぐ最善の方法
防音室は一度設置すると簡単には変更できない大きな買い物です。
数値だけで判断せず、楽器の種類・演奏時間・住環境を総合的に踏まえた上で、専門家のアドバイスを参考にしながら選んでください。
楽器の種類や住環境に合ったDr値を確保するには、構造から設計できる積水ハウスをすまつな経由で相談するのが確実です。
まずは無料相談を活用して、あなたに最適な防音環境づくりの第一歩を踏み出してみてください。




私がよく相談を受けるのが「Dr-35で大丈夫でしょうか」という質問です。
昼間の演奏だけなら何とかなる場合もありますが、夜間や早朝に弾く可能性があるなら、迷わずDr-40以上をおすすめしています。
後から等級を上げることはできないので、最初に少し余裕を持って選ぶのが防音室選びの鉄則です。