一人暮らしの防音賃貸選び!安い物件やゲーマー向け対策を徹底解説
こんにちは。「ラッパ吹きの防音研究所」所長の「J」です。
これから一人暮らしを始めるにあたって、防音性の高い賃貸物件を探しているけれど、具体的に何を基準に選べばいいのか分からず悩んでいませんか。
あるいは、現在住んでいる部屋の壁が薄く、隣人の生活音や自分の出すゲームの音が迷惑になっていないか不安を感じているかもしれません。
私自身、かつては賃貸マンションでトランペットの練習場所や騒音苦情に悩み続け、最終的には自宅に防音室をDIYで構築するに至った経験があります。
その過程で音響や建築構造について徹底的に調べ、多くの失敗も重ねてきました。
特に最近はリモートワークやゲーム実況など、自宅で音を出す機会が増えており、安い家賃で快適な防音環境を整えたいという相談もよく受けます。
この記事では、私の経験と専門的な知識をもとに、後悔しない物件選びのポイントや、賃貸でも実践できる現実的な対策についてお話しします。
- 鉄筋コンクリート造などの構造による遮音性の違い
- 家賃を抑えつつ防音性の高い部屋を見つける方法
- ゲーマーや配信者が注意すべき騒音と機材対策
- 賃貸でのDIY防音における失敗リスクと回避策
失敗しない防音賃貸での一人暮らし物件の選び方

一人暮らしの防音対策において、最も重要かつ決定的な要素は「物件選び」です。
どれほど高価な吸音材を部屋に貼り付けたとしても、建物そのものが持つ構造的な遮音性能には遠く及びません。
一度契約して入居してしまうと、壁の薄さに気づいても簡単に引っ越すことは難しく、多額の初期費用が無駄になってしまうリスクがあります。
特に「防音」というキーワードで検索すると、様々な情報が出てきますが、中には不動産業界のセールストークが含まれており、音響学的な事実とは異なる場合もあります。
ここでは、建築音響の基礎知識に基づき、カタログスペックの読み解き方から、内見時には見落としがちな構造上のポイントまで、失敗しないための判断基準を詳しく解説していきます。
快適な静寂を手に入れるためには、まず敵(騒音)を知り、城(物件)の防御力を正しく評価する眼を持つことが不可欠です。
鉄筋コンクリートと木造アパートの遮音性の違い

これからお部屋を探す際、防音性能を最優先に考えるのであれば、建物の構造種別を正しく理解することがスタートラインになります。
不動産情報サイトでは、木造、鉄骨造、RC造など様々な表記が見られますが、音響的な観点から推奨できるのは「鉄筋コンクリート造(RC)」または「鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)」の物件です。
なぜこれらが推奨されるのかというと、音響工学には「質量則」という絶対的な法則が存在するからです。
これは、壁や床の材料が重ければ重いほど(面密度が高いほど)、音を跳ね返す力(遮音性能)が高くなるという物理法則です。
コンクリートは木材や石膏ボードに比べて圧倒的に比重が大きく、音のエネルギーを効果的に遮断してくれます。
具体的には、D値(空気音遮断性能)という指標で比較すると分かりやすいでしょう。
一般的な木造アパートの場合、D値は30から40程度と言われており、これは隣の部屋の話し声やテレビの音が「何を言っているか分かる」レベルで聞こえてくる数値です。
一方で、しっかりとしたRC造マンションであれば、D値は50以上が期待でき、通常の生活音であれば「ほとんど聞こえない」あるいは「かすかに聞こえる程度」まで減衰させることが可能です。
遮音性能とは?木造新築や防音室で失敗しない基準と対策を徹底解説
木造アパート(W造)は、通気性が良く日本の湿気の多い気候に適しており、建築コストも安いため家賃が手頃というメリットがあります。
しかし、防音という一点においては、残念ながら構造的に不利と言わざるを得ません。
木材そのものが軽いため質量則の効果が得にくく、さらに構造上どうしても隙間ができやすいため、そこから音が漏れてしまうのです。
私自身、学生時代に家賃の安さに惹かれて木造アパートに住んでいたことがありますが、まさにこの「隙間」と「軽さ」に泣かされました。
当時、トランペットの練習をしようとミュート(消音器)を付けて吹いたのですが、それでも隣の部屋の方から「壁を叩かれる」という無言の抗議を受けたことがあります。
木造の壁は、楽器はもちろんのこと、深夜の通話やゲームのボイスチャットには全く耐えられないと考えた方が無難です。
ただし、注意していただきたいのは「RC造なら絶対に無敵である」というわけではない点です。
いくら壁が分厚いコンクリートでも、窓ガラスが薄かったり、換気口(給気口)が隣の部屋や廊下に面していたりすれば、そこが音の抜け道(サウンドブリッジ)となります。
それでも、ベースとなる壁の性能が段違いであるため、「一人暮らしで静かに暮らしたい」「多少はゲームの音を出したい」という希望があるならば、RC造を最低ラインの基準として設定することを強くおすすめします。
構造選びでの妥協は、後々の生活満足度を大きく下げる要因になりかねません。
軽量鉄骨造は騒音が筒抜けになるリスクがある

賃貸物件を探していると、家賃が手頃で見た目も綺麗な「軽量鉄骨造」のアパートをよく見かけると思います。
多くの人が陥りやすい罠が、この「鉄骨」という言葉の響きです。
なんとなく「木造よりは頑丈そうだし、鉄だから防音もしっかりしているだろう」というイメージを持ってしまいがちですが、音響的な実力は木造とほとんど変わらないケースが多々あります。
まず、「軽量鉄骨造」とは、厚さ6mm未満の薄い鋼材を骨組みに使ったプレハブ工法の建物を指します。
骨組みこそ鉄ですが、壁や床の構成材料は木造アパートと似ており、外壁にはサイディング、内壁には石膏ボードが使われています。
ここで問題になるのが、やはり「壁の厚み」と「質量」です。
軽量鉄骨の物件は、建築コストを抑えるために壁の厚さが最小限に設計されていることが多く、界壁(隣の部屋との間の壁)が石膏ボード数枚とその間の空洞だけで構成されていることも珍しくありません。
この構造では、太鼓のように音が共振してしまう「太鼓現象」が起きやすく、特定の周波数の音がむしろ増幅されて隣に伝わってしまうことさえあります。
実際に住んだことのある方なら共感していただけると思いますが、隣人の足音はもちろん、スマートフォンのバイブレーションの音、コンセントを差し込む音、さらにはトイレを流す音まで鮮明に聞こえてくることがあります。
また、鉄骨には「振動を伝えやすい」という特性もあります。
建物全体がブレース(筋交い)で繋がっているため、離れた部屋のドアを閉める衝撃音が、鉄骨を伝わって自分の部屋まで響いてくることもあります。
これは「個体伝播音」と呼ばれる現象で、空気を伝わる音よりも防ぐのが難しく、生活上の大きなストレス要因となります。
【ここが落とし穴】
不動産屋さんの営業トークで「ここは鉄骨造なので、木造よりはずっと静かですよ」と言われることがありますが、その言葉を鵜呑みにしてはいけません。
必ず「重量鉄骨ですか? それとも軽量鉄骨ですか?」と確認してください。
重量鉄骨であれば、骨組みが太く、床や壁にコンクリート(ALCパネルなど)が使われていることが多いため、遮音性は向上します。
しかし、一人暮らし向けの家賃5〜7万円帯のアパートの多くは「軽量鉄骨」であり、ここでの選択ミスが後の騒音トラブルに直結します。
内見時には、壁を軽くノックしてみる(軽い音がしたら中空の可能性が高い)などのチェックも有効ですが、基本的には構造種別で判断するのが賢明です。
楽器相談可物件でも完全防音ではない注意点

音楽をやる方や、ゲーム実況で声を出したい方が検索条件に含めるのが「楽器相談可」というキーワードです。
しかし、この「楽器相談可」と「防音物件(防音構造)」を混同してしまうと、入居後に深刻なトラブルに巻き込まれる可能性があります。
これらは全く異なる概念であり、提供される住環境の質も天と地ほどの差があります。
まず、「楽器相談可」物件の正体についてお話ししましょう。
これは建築的な性能を示す言葉ではなく、単なる「管理規約上の許可」を意味しています。
つまり、「このマンションは普通のRC造や鉄骨造だけど、大家さんが優しいから(あるいは空室対策として)、ルールを守るなら楽器を弾いても追い出しませんよ」という契約条件の話に過ぎないのです。
したがって、建物自体に特別な防音工事(二重床、二重壁、防音ドアなど)が施されているわけではありません。
そのため、演奏に関しては非常に厳しいルールが設けられているのが一般的です。
例えば、「演奏時間は朝10時から夜20時まで」「連続演奏は1時間以内」「ピアノは可だが、振動の大きい電子ドラムや金管楽器は不可」といった具合です。
これに対して「防音物件(完全防音)」と呼ばれるものは、音楽スタジオのように部屋全体が浮き床構造になっていたり、防音ドアや二重サッシが標準装備されていたりと、物理的に音を漏らさない設計がなされています。
当然、24時間演奏可能であったり、グランドピアノやドラムがOKだったりしますが、家賃は相場の1.5倍から2倍以上跳ね上がります。
私がトランペット奏者として物件を探していた時も、この違いには何度も悩まされました。
ある不動産屋で「楽器可」と紹介された物件に行ってみると、ただの古い木造アパートで、「隣の人も耳が遠いから大丈夫だよ」などと適当なことを言われた経験もあります。
もしあなたが「楽器可だから、夜中にゲームで絶叫しても大丈夫だろう」と考えているなら、それは危険な賭けです。
普通のマンションの遮音性能では、夜間の叫び声(90dB近く)は間違いなく近所迷惑になります。
「楽器可」の物件を選ぶ際は、必ず契約書の「特約事項」や「禁止事項」を隅々まで読み込んでください。
「近隣からの苦情が来た場合は直ちに演奏を中止すること」といった条項が入っていることが多く、結局は音を出せずに肩身の狭い思いをすることになりかねません。
「楽器可=何をしても良い」わけではないことを肝に銘じ、自分の出す音量と物件の許容範囲を慎重に見極める必要があります。
安い家賃で防音性の高い部屋を探すコツ

「防音性の高いRC造が良いのは分かったけれど、新築のRCマンションなんて家賃が高くて手が出ない」
これは、多くの一人暮らし予備軍が直面する切実な悩みです。
都心部でしっかりとした防音性能を持つマンションを借りようとすれば、ワンルームでも10万円を超えることは珍しくありません。
しかし、視点を少し変えて探すことで、相場よりも安く、かつ高い防音性能を持つ「掘り出し物」に出会える可能性があります。
私が特におすすめする戦略の一つが、「バブル期(1980年代後半〜90年代初頭)に建てられた分譲賃貸のRCマンション」を狙うことです。
この時代に建てられた「分譲仕様(誰かが購入して住むことを前提とした)」のマンションは、現在の賃貸専用マンションよりも贅沢に予算が使われていることが多いのです。
コンクリートの壁が厚く(180mm以上など)、床のスラブ厚もしっかり確保されているため、築年数は古くても遮音性能は現代の軽量RC造より優れている場合があります。
もちろん、築30年以上となれば、設備(キッチンや浴室)の古さは否めません。
しかし、最近では内装だけを綺麗にリノベーションした物件も増えています。
「外観や共用部は古めかしいけれど、部屋の中は綺麗で、壁は分厚いコンクリート」という物件は、家賃が抑えられており、防音重視のユーザーにとっては最高のコストパフォーマンスを発揮します。
また、もしあなたが東京都心ではなく、静岡県富士市のような地方都市や郊外で物件を探しているなら、アパートではなく「戸建て賃貸(貸家)」という選択肢も非常に強力です。
地方では、相続などで空き家になった戸建てが、アパート並みの家賃(5〜6万円台)で貸し出されていることがあります。
戸建ての最大のメリットは、隣の家と物理的に距離が離れていることです。
音は空気中を伝わる間に距離の二乗に反比例して減衰するという性質があります。
隣家と数メートル離れていれば、壁の性能だけに頼る集合住宅よりも、はるかに高い防音効果が物理的に保証されるのです。
私も以前、地方で古い平屋の借家に住んでいたことがありますが、隣を気にせず音を出せる開放感は格別でした。
「防音=防音マンション」という固定観念を捨て、「構造の頑丈さ」や「隣との距離」という物理的な条件に着目することで、予算内での最適解が見つかるはずです。
最上階や角部屋を選んで隣人トラブルを回避

物件の構造や築年数だけでなく、その部屋が建物の「どこにあるか」という位置条件も、防音性能を左右する極めて重要なファクターです。
予算が許すなら、迷わず「最上階の角部屋」を第一候補にしてください。
これは精神衛生上、最強の選択肢と言えます。
集合住宅における騒音トラブルのナンバーワンは、間違いなく「上階からの足音」です。
ドシドシという重量床衝撃音は、コンクリートの厚いマンションでも完全には防ぎきれない厄介な音です。
しかし、最上階を選べば、自分の頭上で生活する人がいないため、このリスクをゼロにすることができます。
これだけで、騒音リスクの半分は解消されたと言っても過言ではありません。
さらに「角部屋」を選ぶことで、隣人と接している壁の面積を減らすことができます。
中部屋の場合、両隣に人が住んでいるため、左右からの音のリスクがありますが、角部屋なら片側は外壁です。
単純計算で、隣人からの騒音リスク、および自分が隣人に迷惑をかけるリスクを物理的に50%カットできるわけです。
「最上階・角部屋」は、追加の防音工事費を払うことなく得られる、最も確実な物理的防御策です。
もちろん、デメリットがないわけではありません。
最上階は夏場に屋根からの熱を受けて室温が上がりやすかったり、エレベーターがない物件では階段の上り下りが大変だったりします。
また、家賃も中部屋に比べて数千円高く設定されていることが一般的です。
しかし、私の経験上、数千円の家賃差で「静寂」と「安心」が買えるなら安いものです。
隣人が一人減るだけで、深夜に少し音を出してしまった時の「隣に聞こえたかな?」という不安も半減します。
私が物件を探す際は、多少駅からの距離が遠くなっても、築年数が古くても、この「最上階・角部屋」という条件だけは絶対に譲らないようにしています。
それほどまでに、位置選びは快適な生活を守るための防波堤となるのです。
賃貸の一人暮らしで効果的な防音対策とグッズ

ここまでは物件選びについてお話ししてきましたが、理想的なRC造の最上階角部屋が見つかればベストですが、予算や立地、時期の都合で妥協せざるを得ないこともあるでしょう。
また、この記事を読んでいる方の中には、すでに木造や軽量鉄骨のアパートに住んでいて、今まさに騒音に悩んでいるという方もいるはずです。
引っ越しができない状況でも、諦める必要はありません。
現代には様々な防音グッズや、工夫次第で効果を発揮する対策が存在します。
ここからは、賃貸物件の壁を傷つけずに導入できる具体的な防音対策や、効果的なグッズの選び方について、私の実体験と失敗談を交えて詳しく解説していきます。
「音を出さない工夫」と「音を漏らさない工夫」の両面からアプローチしていきましょう。
ゲーム実況や配信に必要な遮音レベルと対策

近年、私の元に寄せられる相談で急増しているのが、ゲーム実況やボイスチャット(VC)、オンライン会議に関する騒音問題です。
楽器の音は一定のリズムや旋律がありますが、ゲーマーの声というのは、近隣住民にとって非常に不快な「刺激音」になりやすい特性を持っています。
ゲームに熱中している時の「叫び声」や、仲間と盛り上がった時の「笑い声」は、突発的で音量が大きく、しかも感情が高ぶっているため声質も甲高くなりがちです。
一般的な人間の会話レベルは60dB程度ですが、ゲーム中の絶叫や悲鳴は瞬間的に90dB(怒鳴り声、あるいは犬の吠える声と同等)に達することもあります。
夜間の静かな住宅街の暗騒音(ベースとなる環境音)は30dB〜40dB程度ですから、そこで90dBの音を出せば、壁の薄いアパートでは間違いなく警察を呼ばれるレベルの騒音となります。
対策を考える上で重要なのは、「部屋全体を防音する」のではなく、「音の発生源(自分)を囲い込む」という発想の転換です。
部屋の壁に吸音材を貼っても、90dBの声を近隣に聞こえないレベルまで下げることは物理的に不可能です(壁の性能が追いつきません)。
したがって、最も効果的なのは、後述するような「簡易防音室」を導入して、音源を物理的に隔離することです。
もし防音室の導入が難しい場合は、せめて「時間帯の管理」と「低音の制御」を行いましょう。
深夜(特に21時以降)は、近隣住民が就寝モードに入り、周囲の音が静かになるため、相対的に自分の声が大きく響きます。
この時間帯はボイスチャットのボリュームを意識的に落とすか、テキストチャットに切り替えるのが最低限のマナーです。
また、ゲームのBGMや効果音に含まれる「重低音」にも注意が必要です。
サブウーファーを使って爆発音などを楽しんでいると、低音の振動が床を伝って隣や下の階に響きます。
これは「ブーン」という不快な振動として伝わるため、ヘッドホンの使用を徹底することで回避しましょう。
ゲーマーとしての活動を長く続けるためにも、近隣との共存を図るためのセルフコントロールが求められます。
簡易防音室の自作はカビや換気のリスクがある

「既製品の防音室は高いから、ホームセンターで材料を買ってきて自作しよう」
そう考える方は非常に多いですし、YouTubeなどでも自作防音ブースの動画は人気があります。
しかし、実際にDIYで防音室を作った経験がある私としては、安易な自作は推奨できません。
そこには、動画では語られない「生命に関わるリスク」と「資産価値を損なうリスク」が潜んでいるからです。
防音室において最も難しく、かつ重要なのは「遮音」ではなく「換気」です。
音を漏らさないためには、隙間を徹底的に塞いで密閉する必要があります。
しかし、人間が入る空間を密閉してしまうと、当然ながら酸素濃度が低下し、二酸化炭素濃度が急上昇します。
【防音日誌】DIY防音室の落とし穴。私が体験した「息苦しさ」と換気の重要性
さらに、狭い空間内で高性能なゲーミングPCやモニターを稼働させると、排熱の逃げ場がなくなり、室温はあっという間に40度近くまで上昇します。
夏場に自作防音室でゲームをすれば、数分でサウナ状態になり、熱中症や脱水症状を引き起こす危険性が極めて高いのです。
そして、もう一つの恐怖が「カビ」です。
人間は呼吸や皮膚呼吸によって常に水分を放出しています。
密閉された防音室内では湿気が滞留しやすく、特に吸音材として使われるウレタンフォームやフェルト、そして防音室と部屋の壁との隙間などは、カビにとって絶好の繁殖場所となります。
私が自作した際も、梅雨の時期に防音室の裏側を見てみると、壁紙が黒カビでびっしりと覆われており、愕然としたことがあります。
【退去時のリスク】
もし自作防音室が原因で賃貸物件の壁紙や床をカビさせてしまった場合、それは「善管注意義務違反」となり、退去時に高額な原状回復費用(壁紙の全面張り替えや除菌処理費など)を請求される可能性があります。
数万円をケチって自作した結果、数十万円の賠償金を払うことになっては本末転倒です。
安全性を考えるなら、換気ファンがあらかじめ計算して設計されている「だんぼっち」や「OTODASU」などの既製品、あるいはヤマハの「アビテックス」のような認定中古品を使う方が、トータルのコストとリスクを抑えられます。
壁に防音シートを貼るDIYの効果と限界

賃貸の壁に貼れる「防音シート」や「吸音パネル」も、手軽な対策として人気があります。
しかし、これらを購入する前に、「吸音」と「遮音」の違いを明確に理解しておく必要があります。
ここを誤解していると、「お金をかけたのに隣からの苦情が止まらない」という悲劇が起こります。
まず、スポンジやフェルト状の「吸音材」は、音の反射を減らして部屋の中の響き(エコー)を抑えるためのものです。
これを壁に貼ると、自分の声がクリアに聞こえるようになりますが、音を跳ね返す力はないため、音はそのまま壁を通り抜けて隣に届きます。
つまり、吸音材単体では防音効果(遮音効果)はほとんど期待できません。
音を隣に漏らさないためには、ゴムや鉛などでできた重い「遮音シート」が必要です。
しかし、効果のある遮音シートは非常に重く(1メートルあたり数キログラム)、賃貸の壁紙の上に両面テープで貼ると、重みで剥がれ落ちるか、剥がす時に壁紙ごと破れてしまいます。
また、よく誤解される「オトナシート」のような製品は、本来は洗濯機や室外機の鉄板に貼って「振動を止める(制振)」ためのものであり、壁に貼って空気中の音を止める用途には適していません。
【効果的なサンドイッチ構造】
もしDIYで壁の防音をするなら、理論的には「壁 → 遮音シート(音を止める) → 吸音材(反射を消す)」の順に重ねるサンドイッチ構造にする必要があります。
賃貸でこれを実現するためには、壁に直接貼るのではなく、2×4材と「ラブリコ」や「ディアウォール」といった突っ張り器具を使って柱を立て、そこにベニヤ板を打ち付け、その板に遮音シートと吸音材を施工するという「もう一つの壁を作る」大掛かりな方法が唯一の正解です。
これなら壁を傷つけずに高い効果が得られますが、手間と費用はそれなりにかかります。
賃貸で壁に穴を開けない防音DIY!効果的な自作とニトリ活用法

大掛かりな防音工事や防音室の導入が難しい場合でも、諦める必要はありません。
音を「漏らさない」のではなく、そもそも音を「出さない(小さくする)」という源流対策に目を向ければ、低コストで高い効果を得ることができます。
特にPCゲーマーやテレワークをする方にとって、キーボードの打鍵音は意外と大きな騒音源です。
例えば、カチカチというクリック感が心地よい「青軸」のメカニカルキーボードを使っていませんか?
このスイッチ音は高周波を含んでおり、夜間には掃除機や洗濯機並みの不快な騒音として壁を透過します。
これを「静音赤軸(ピンク軸)」や「静電容量無接点方式」のキーボードに変えるだけで、打鍵音を10〜15dB程度(体感で半分以下)に下げることができます。
これは壁を厚くする工事をするよりも、はるかに安上がりで確実な防音対策です。
また、キーボードを叩く振動が机を伝わり、さらに床を伝って響くこともあります。
これに対しては、厚手のゲーミングマウスパッドやデスクマット(フェルト製など)をキーボードの下に敷くだけで、振動音を大幅にカットできます。
さらに、椅子のキャスターが転がる「ゴロゴロ音」も下階への迷惑になりやすいため、チェアマットやラグを敷くことも必須のマナーです。
これらは一つ一つは数千円から数万円程度の投資ですが、積み重ねることで部屋全体の騒音レベルを確実に下げることができます。
「静かなデバイスを選ぶ」というのも、現代の賃貸暮らしにおける重要なスキルの一つと言えるでしょう。
ボイスチャットの騒音はマイク設定で制御する

最後に、配信者やゲーマーの方に強くおすすめしたいのが、オーディオインターフェースやマイク設定の見直しです。
ボイスチャットでつい声が大きくなってしまう原因の一つに、「自分の声がちゃんと相手に届いているか不安」「自分の声が聞こえにくい」という心理的要因があります。
これを機材の設定で解決しましょう。
まず、コンデンサーマイクなどの感度が高いマイクを使っている場合、マイクの入力ゲイン(感度)をあえて下げてみてください。
そして、その分マイクを口元(5〜10cm程度)まで近づけて話すようにセッティングします。
こうすることで、マイクはあなたの声だけをダイレクトに拾い、周囲の雑音(キーボード音や環境音)は拾いにくくなります。
結果として、あなたは小さな声でボソボソと喋っても、相手にはクリアで大きな声として届くようになります。
「大声を出す必要がない環境」を機材で作ってしまうのです。
また、マイクの周りに「リフレクションフィルター」という半円形の吸音パネルを設置するのも非常に有効です。
これは部屋の反響音(ルームリバーブ)をカットしてくれるため、防音効果があるだけでなく、配信の音質がプロっぽくクリアになるという副次的なメリットもあります。
物理的な防音工事が難しくても、こうしたガジェットや設定の工夫(ソフト側でのコンプレッサー設定など)で、近隣への音漏れリスクを最小限に抑えることは十分に可能です。
まとめ:防音賃貸での一人暮らしを快適にする

今回は、防音賃貸での一人暮らしをテーマに、物件の選び方から具体的な対策まで、私の経験を余すことなくお話ししました。
一人暮らしで静かな環境を手に入れるためには、まず「鉄筋コンクリート造(RC)」の物件を選ぶことが基本中の基本であり、これが全ての土台となります。
木造や軽量鉄骨は、家賃の魅力こそありますが、音に敏感な方や、自宅で趣味の音を出したい方にとっては、生活の質を著しく下げるリスクがあることを忘れないでください。
また、ゲーマーや配信者の方は、物件のスペックだけに頼るのではなく、「音を出さない」工夫も同時に進めていく必要があります。
静音キーボードの導入、マイク設定の最適化、そして必要であれば簡易防音室(OTODASUやおてがるーむ等)への投資など、自分のスタイルに合った対策を組み合わせてみてください。
DIYでの対策には、カビや換気不足、原状回復といった見えにくいリスクが伴いますので、私の失敗談も参考にしながら、慎重に行うことをおすすめします。
しっかりとした知識を持って物件を選び、適切な対策を行えば、賃貸でも周囲に気兼ねなく、自分だけの時間を楽しめる空間は必ず作れます。
あなたの新生活が、音のトラブルとは無縁の、快適で充実したものになることを心から願っています。
静寂は、知恵と工夫で手に入れるものです。応援しています。

